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self-limited(自然治癒の見込める)気道感染症に対する抗生剤治療による細菌感染症の予防効果: コホート研究

Gulliford MC, et al. Safety of reduced antibiotic prescribing for self limiting respiratory tract infections in primary care: cohort study using electronic health records. Bmj 2016; 354:i3410.

http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27378578

 


「風邪に抗生剤は効かない」に異論をはさむ医療者は少ないでしょう。

風邪そのものは一般的なウイルスが原因であり、抗生剤は効果がないからですが、一方、「こじれるといけないから」抗生剤を処方するケースは多々見受けられます。現実問題、細菌感染とウイルス感染をクリアカットに鑑別する方法がない以上、ある程度は許容せざるを得ない場面もあるでしょう(抗生剤処方での不利益に関し、説明努力を続ける必要性がありますが)。

しかし、実際はどれくらい「予防」しているのでしょう。


 

P: 英国のClinical Practice Research Datalink 610施設 2005年から2014年まで4500万人/年

E: 一般診療における、抗生物質を使用した、self-limitedな(治療をしないでも長期的には症状が落ち着いたり治まる性質のある)気道感染症(RTIs)診療の標準比率、登録された患者1000人ごとのRTIsに対する抗生剤処方比

C: -

O: 肺炎、扁桃周囲膿瘍、乳様突起炎、蓄膿症、髄膜炎、頭蓋内膿瘍、ルミエール症候群の発生率

 

【結果】

2005年から2014年までに、抗生物質が処方されたRTIs診療の比率は、男性において53.9%から50.5%まで、女性において54.5%から51.5%まで減少した。

髄膜炎、乳様突起炎、扁桃周囲膿瘍の新規発症は、1年ごとに5.3%、4.6%、1.0%それぞれ減少したが、肺炎新規発症は0.4%増加した。

年齢と性で標準化した肺炎と扁桃周囲膿瘍の発生率は、抗生剤を投与した最も多い四分位に比較して、最も少ない四分位のほうが多かった。抗生物質処方を10%削減すると、修正相対危険度(RR)が、肺炎12.8%(95%信頼区間7.8%〜17.5%、P < 0.001)、扁桃周囲膿瘍9.9%(5.6%〜14.0%、P < 0.001)であった。

RTIs7000例に対する抗生剤処方が10%削減する場合、毎年肺炎1.1人(95%信頼区間0.6〜1.5)、10年毎に扁桃周囲膿瘍が0.9人(0.5〜1.3)増加する可能性がある。乳様突起炎、蓄膿症、髄膜炎、頭蓋内膿瘍、ルミエール症候群は、処方が少ない群と多い群で頻度に差はなかった。

 

【コメント】

RTIsに対して抗生物質を削減する方法では、肺炎と扁桃周囲膿瘍の発生率をわずかに増加させる可能性があり、乳様突起炎、蓄膿症、細菌性髄膜炎、頭蓋内膿瘍、ルミエール症候群は増加させる可能性は低いとまとめられます。

しかし、その効果は極めて少なく、7000人に投与して、「治療可能な」肺炎や扁桃周囲膿瘍を約1名減らす程度といえます。一方で、抗生剤そのものでアレルギーを起こす可能性、下痢などの副作用をきたす可能性などから、やはり多くの場合は抗生剤投与のメリットは極めて限定的といえるのではないでしょうか。

 

 

評価:
Robert M. Kliegman MD,Bonita M.D. Stanton MD,Joseph St. Geme MD,Nina F Schor MD PhD
Elsevier
¥ 15,500
(2015-05-06)

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